LNGとは
LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)とは、天然ガスの主成分であるメタン(CH4)を-162℃まで冷却し、液体にしたものである。液化することで体積が気体時の約600分の1に圧縮されるため、パイプラインが敷設されていない地域への海上輸送が可能となる。無色透明・無臭で、毒性がなく、石炭や石油と比較してCO2排出量が少ないクリーンエネルギーとして位置づけられている。
天然ガスは世界の一次エネルギー消費の約24%を占めており、発電・都市ガス・工業用途に広く利用されている。日本は発電用燃料の約30%を天然ガス(LNG)に依存しており、エネルギー安全保障上、極めて重要な資源である。
製造・輸送の仕組み
LNGの製造プロセスは、まず天然ガスから水分・CO2・硫黄化合物などの不純物を除去し、段階的に冷却して-162℃で液化するという流れである。この液化プラントの建設には数兆円規模の投資が必要であり、カタール、オーストラリア、米国、ロシア、マレーシアなどの主要産ガス国に集中している。
輸送にはLNG専用タンカー(LNGキャリア)が使用される。タンカーの貯蔵タンクは二重構造の断熱設計で、-162℃の極低温を維持しながら輸送する。1隻あたりの積載量は約7万トン(大型船で約17万立方メートル)で、日本の大型火力発電所1基の約1ヶ月分の燃料に相当する。
受入側では、LNG基地(受入ターミナル)で気化させ、パイプラインを通じて発電所や都市ガス網に供給される。日本には約30カ所のLNG受入基地があり、その多くは東京湾・伊勢湾・大阪湾沿岸に立地している。
日本のLNG輸入
日本は世界第2位のLNG輸入国(中国に次ぐ)であり、年間約7,000万トンほどを輸入している。輸入先はオーストラリア(約35%)、マレーシア(約13%)、カタール(約12%)、米国(約10%)、ロシア(約9%)、ブルネイ(約5%)などに分散されている。
日本がLNGに大きく依存する背景には、2011年の東日本大震災後に原子力発電所の多くが停止し、代替電源としてLNG火力発電が急拡大した経緯がある。電力会社やガス会社は長期契約(20年程度)を中心にLNGを調達しているが、スポット市場での調達も増加傾向にある。
エネルギー自給率が約12%と低い日本にとって、LNG調達の安定性は国家安全保障に直結する問題である。調達先の分散化、備蓄体制の強化、再生可能エネルギーの拡大が課題とされている。
価格の決まり方
LNG価格は主に3つの指標で取引されている。アジア市場ではJKM(Japan Korea Marker)が基準となり、プラッツ社が算出する。欧州市場ではオランダTTF(Title Transfer Facility)、米国市場ではヘンリーハブ(Henry Hub)がそれぞれ基準となっている。
長期契約のLNG価格は伝統的に原油価格に連動する方式(原油リンク)が採用されてきた。具体的には、JCC(Japan Crude Cocktail:日本の原油輸入平均価格)に一定の係数を掛けた価格で取引される。しかし近年は、スポット取引やヘンリーハブ連動型の契約も増えており、価格形成メカニズムが多様化している。
2026年4月時点のJKMは中東情勢のさらなる緊迫化を受けて20ドル/MMBtu前後に上昇しており、2020年の約2ドルと比較すると依然として極めて高い水準にある。
最近の供給危機
2026年4月現在、世界のLNG市場は深刻な供給危機が継続している。イランによるドローン攻撃でカタール・ラスラファンのLNG液化プラントが損傷し、年間1,280万トン(世界LNG貿易量の約20%)の生産能力が停止した状態が続いている。カタールエナジーは3月24日に一部契約についてforce majeure(不可抗力条項)を宣言し、シェルやトタルエナジーズもカタール産LNG契約でforce majeureを発動した。修復には3〜5年を要するとの見通しで、2026年に見込まれていた供給余剰が一転して供給不足に転じている。
さらにホルムズ海峡の緊張は2026年4月に入りさらにエスカレートし、通行料導入の報道や通航制限の動きがLNGタンカーの運航を一層困難にしている。世界のLNG貿易量の約3分の1がホルムズ海峡を経由しており、封鎖リスクはLNG価格の高止まりの主因となっている。
LNGは原油と異なり、戦略備蓄(SPR)のような大規模な備蓄制度が整備されておらず、日本のLNG備蓄量は約2〜3週間分にとどまる。このため供給中断の影響が市場価格に即座に反映されやすく、電力料金やガス料金への波及が現実化している。日本政府は緊急時のLNG融通体制の構築や、契約の柔軟化を急いでいる。