米国株式市場、調整局面接近で軟調な週明け
週明けの米国株式市場は、5週連続の下落を受けて反発が期待されたものの、買い手の不在によりS&P 500とNasdaqは下落を継続した。S&P 500は約0.4%下落し、1月27日の高値から約9.2%下落して調整局面に接近。Nasdaqは約0.7%下落し、Nasdaq 100は調整局面入りした。ダウ・ジョーンズ工業株平均はかろうじて約0.1%上昇するにとどまった。市場の焦点は、インフレ懸念から経済成長への懸念へと移行しつつある。
テクノロジー・半導体セクターが下落、その他セクターで明暗
テクノロジーセクターは、その評価額が過去10年以上で最も割安な水準にあるとの見方があるものの、週明けも軟調に推移した。半導体セクターは3日連続の下落を記録し、10%以上値を下げ、過去1ヶ月でハイテク株全体が最も大きな打撃を受けている。これは、Googleの新たなストレージ技術に関する発表や、一部企業の設備投資計画がアナリスト予想を超過したことなど、複合的な要因が影響しているとみられる。
セクター別では、工業株が1.5%超下落し、最大の下落幅を記録した。一方で、金融、公益、生活必需品セクターは上昇した。中東情勢を受けた金属価格の上昇により、米国上場のアルミニウム関連株は上昇を見せた。
金利低下で債券市場に反発、商品価格は高値で推移
債券市場では、中東紛争の長期化を市場が織り込み始め、インフレよりも経済成長への影響に焦点が移ったことで金利が大幅に低下した。7年・8年債利回りは7-8ベーシスポイント、30年債利回りは約5ベーシスポイントそれぞれ下落し、ソブリン債は地域全体で上昇した。
個別銘柄では、Bill Ackman氏の発言を受けてFannie Maeが約51%上昇、Freddie Macが約47%上昇した。アルミニウム価格の上昇を背景にAlcoaが約8%上昇、Century Aluminumが7%超上昇、Rio Tintoも約2.5%上昇した。下落銘柄では、Micronが9.9%下落し、3月18日以降で30%超の下落を記録。Syscoは大型買収発表を受けて15.2%超下落した。
商品市場では、WTI原油価格が1バレル102ドル、ブレント原油価格が1バレル112ドルに上昇。金はドル高とFRBの利上げ観測を逆風に一時下落したものの、200日移動平均線でサポートされ反発した。中央銀行による金購入ペースは鈍化傾向にある。アルミニウムは中東のサプライチェーン混乱による供給不安から当初価格が上昇したが、現在は成長鈍化懸念によりやや下落。銅については、中国での在庫減少と現物プレミアムの上昇が見られ、価格下落局面で買いが入った可能性が示唆されている。
FRBは長期インフレ期待を抑制と評価、中東情勢が市場の焦点
FRBのパウエル議長は、長期的なインフレ期待は「良好に抑制されている(well-anchored)」ように見えると述べ、原油価格高騰のような一時的な供給ショックに対しては、金融政策の長期的なラグと供給への効果の限定性を考慮し、「見送る(look through)」傾向にあると説明した。しかし、FRBは労働市場の下方リスク(利下げを示唆)とインフレの上方リスク(利上げを示唆)という二つの目標間の緊張関係に直面していることも認めた。
ニューヨーク連銀総裁ジョン・ウィリアムズは、中東紛争が経済見通しに「実質的なリスクと高い不確実性」をもたらすと指摘し、インフレ上昇と経済活動の減退を同時に引き起こす可能性に言及した。ただし、労働市場はインフレ圧力には寄与していないとの見解を示している。一方、FRBのStephen Miran理事は、イラン戦争による原油価格高騰は一時的な価格水準の上昇にとどまり、FRBはインフレよりも景気減速と失業率の上昇を懸念すべきであり、段階的に約100ベーシスポイント(1%)の追加利下げを実施すべきだと主張した。インフレ連動債市場の5年物および10年物のインフレ期待は「非常に抑制されている」と報告されている。
地政学的には、中東紛争の長期化を市場が織り込み始め、その焦点はインフレ抑制から経済成長への懸念へとシフトしている。高エネルギー価格はテクノロジー業界を含む米国経済全体に影響を与えるが、現在の経済は1970年代・80年代と比較して石油依存度が大幅に低下しており、その影響は過去ほど大きくない可能性が高いとみられている。
NASAの月面再探査計画「アルテミス計画」は、中国への対抗意識を背景に、将来的な「月経済」創出や火星探査を見据えたものであり、SpaceXやBlue Originといった民間宇宙産業との連携モデルが注目される。SpaceXは本年中にIPOを予定している。
今後の注目点
- S&P 500の動向: S&P 500が正式に調整局面入りするかどうかが注目される。
- FRBの金融政策: 労働市場と物価安定という二大目標間の「緊張」に対し、FRBがどのような政策判断を下すかが焦点となる。特に、エネルギー価格高騰へのFRBのスタンス(「見送る」のか、インフレ期待の動向次第で対応するのか)が注視される。
- ユーロ圏の3月インフレ率: 週半ばに発表されるユーロ圏の3月インフレ率が予想を上回る場合、市場がインフレリスクを再認識する可能性があり、重要な注目点となる。
- 米国雇用関連データ: 市場休場日ではあるものの、米国の雇用関連データも引き続き市場参加者によって分析されるだろう。
- SpaceXのIPO: 急成長する民間宇宙産業への大規模な投資機会として、SpaceXの新規株式公開(IPO)の動向が市場の関心を集める可能性が高い。
- サプライチェーンの動向: 現在のサプライチェーンの脆弱性が、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」への移行による再在庫化サイクルを促す可能性があり、これがベースメタル市場などに与える影響が注目される。