米国株式市場:ダウ1.73%安、主要指数は5週連続下落
2026年3月27日の米国株式市場は、中東情勢への懸念から広範な下落を見せた。S&P 500は1.68%安の6,368.54ドルで取引を終え、8月21日以来の安値を記録し、5週連続の下落となった。ダウ・ジョーンズ工業株平均は793.78ドル安(1.73%安)の45,166.33ドル、ナスダック総合指数は459.72ポイント安(2.15%安)の20,948.36ドルで、調整局面入りを示唆した。小型株のラッセル2000も43.63ポイント安(1.76%安)の2,449.69ドルであった。主要平均株価指数は2日連続の下落軌道にあり、ダウとS&P 500は2022年5月以来最長の週間連敗を記録したと見られる。シティの分析によると、投資家は週末のリスクを避けるため、過去数週間にわたり金曜日にポジションを売却し、月曜日に買い戻すパターンが繰り返されている。
セクター動向:エネルギーが上昇主導、テクノロジー・一般消費財は低迷
セクター別では、エネルギーセクターが堅調に推移したものの、ほとんどのセクターで下落が見られた。S&P 500の11セクター中、エネルギーを含む4セクターが上昇し、一般消費財が特に低迷した。 テクノロジー分野では、AppleがSiriを他社製AIアシスタントに開放する「不可知論的」アプローチを検討しており、他社製AIチャットボットのApp Store経由でのサブスクリプションから30%の収益を得る方針を示した。また、AI人材の積極的な引き抜きに対抗するため、iPhone製品デザインチームのエンジニアに多額の一時ボーナス(RSU)を支給し、優秀な人材の流出を防ぐ動きも見られた。 肥料市場はイラン戦争の勃発により混乱しており、特に窒素系およびリン酸塩系肥料の供給懸念が高まっている。ホルムズ海峡の封鎖リスクは、世界の尿素生産量の約3分の1に影響を及ぼす可能性があり、肥料価格は2006年から2023年にかけて大幅に上昇し、イラン戦争勃発後に急騰した。 グローバルな食料トレンドとして抹茶の人気が急増しており、2024年の日本の緑茶輸出額は2億4400万ドルと前年比で25%増加し、米国の抹茶販売も過去3年間で86%増加した。これによりサプライチェーンに大きな負荷がかかり、価格のボラティリティが高まる可能性がある。
注目銘柄・資産:原油急騰、Entergy・Pelotonが上昇
上昇銘柄
- **Entergy(ETR)**は、Meta Platformsとのデータセンター向けガス火力発電所建設契約を背景に6.82%高の109.88ドルで取引を終えた。
- **Brown-Forman(BF/B)**は、Pernod Ricardによる買収の可能性のニュースを受け、5.63%高の27.19ドルとなった。
- **Peloton Interactive(PTON)**は、アクティビスト投資家Eric Jacksonの買い発言により8.85%高の4.43ドルを記録した。
下落銘柄
- **Amazon.com(AMZN)**は、欧州委員会がサイバー攻撃を受け、Amazon Web Services(AWS)アカウントから内部データが盗まれた可能性があり、3.95%安の199.34ドルとなった。
- **Coinbase Global Inc(COIN)**は、Better Mortgageとの提携で暗号通貨担保住宅ローンを提供する計画があるものの、7.06%安の161.14ドルで引けた。
- **Palo Alto Networks Inc(PANW)**は、Fortune誌のレポートがAIモデルの悪用可能性を指摘したことで5.97%安の147.02ドルで取引を終えた。
商品・その他資産
- 原油価格は中東情勢への懸念から急騰し、ブレント原油は約5%上昇して113ドル台、WTI原油は約6%上昇して100ドルとなり、2022年7月20日以来の最高値を記録した。J.P.モルガンは、発言中、ICEブレント原油が110.82ドル(2.60%上昇)で推移していたと報告した。
- 投資家ピーター・ブックヴァー氏は、市場エクスポージャーとしてゴールド、エネルギー株、肥料株、ビットコインを保有していることを明らかにした。
マクロ・地政学:イラン戦争が市場の重石、金利上昇とFRBの政策スタンスが焦点に
中東情勢、特にイラン戦争の勃発が市場の最大の懸念材料となり、原油価格の急騰を招いた。ホルムズ海峡の封鎖リスクは、エネルギー供給だけでなく、世界の肥料供給にも深刻な影響を与える可能性がある。J.P.モルガンは、原油価格が年間を通じて110ドルで推移した場合、S&P 500企業の収益予想が5%減少する可能性を指摘した。 米国債市場では、長期債利回りが上昇した。2年債利回りは3.9016%(8.42bp低下)で下落した一方、10年債利回りは4.4298%(1.81bp上昇)、30年債利回りは4.9697%(3.71bp上昇)となり、イールドカーブのスティープニングが見られた。世界的に債券市場にはインフレ、高金利、そして各国政府の過剰債務に対する懸念から売り圧力がかかっており、特に米国10年債利回り4.50%が注目すべき主要水準とされている。失業率は2月に4.4%に上昇し、非農業部門雇用者数は9万2千人減となった。ニューヨーク連銀の第4四半期データでは、家計債務の延滞率が4.8%に上昇した。 FRBの金融政策については、イラン情勢の不確実性が、利上げも利下げも時期尚早であるとの見方を強めている。J.P.モルガンは、原油価格が100ドル台に達しても米国経済の景気後退は予測せず、成長が鈍化する程度と見ているが、120~150ドルに達すれば大幅な需要破壊が起こる可能性があるとした。FRB元理事らは、生産性向上が関税や原油・肥料価格高騰によるインフレ圧力を完全に打ち消すには不十分であり、FRBは政策金利を据え置き、インフレ期待や賃金上昇圧力などのデータを見極めるべきであるとの見解を示した。市場は次の利上げの可能性を24%と過大に評価しているとの指摘もある。 米中関係においては、イラン戦争が複雑な影響を与えている。中国はイランからの割引価格での原油輸入と湾岸アラブ諸国への経済的投資の間で二律背反の状態にあり、ホルムズ海峡からの石油・ガス供給の予測可能性を重視している。中国はAI、量子コンピューティング、バイオテクノロジーなどの分野で米国を追い抜き、技術的リーダーになることを目指しており、米中間の技術競争は激化している。米国におけるAI規制は50州にまたがる「パッチワーク」状態であり、グローバルな技術競争において持続可能な構造ではないとの指摘があり、単一の国家レベルのAI枠組みの必要性が唱えられている。 世界的な住宅市場では、ファーストタイムバイヤーの平均年齢が2020年の33歳から2025年には40歳に上昇する見込みであると指摘された。OECDの住宅価格対所得比率は2022年のピークからやや下落したものの、依然として過去最高水準に近い。オーストラリアでは住宅価格が平均週収の9倍に達しており、シンガポール政府の公共住宅管理政策が対照的に注目されている。
今後の注目点:FRBの政策判断、地政学リスク、市場流動性
- FRBの金融政策: イラン情勢とインフレ圧力のバランスをFRBがどのように評価し、政策判断を下すかに注目が集まる。労働市場の動向とインフレへの影響、そして生産性向上に関するデータも引き続き注視される。FRBは現在の政策水準で、経済の進化に応じて適切に対応できる立場にあると認識されている。
- 地政学的リスク: 中東情勢のさらなる悪化は原油価格を押し上げ、世界のサプライチェーンに広範な影響を及ぼす可能性がある。中国がイラン情勢においてどのような役割を果たすか、その外交的行動も重要となる。
- 市場の流動性: 米国債市場における債券入札の不調や市場の深さの悪化が見られる場合、FRBが金融市場の機能保護のために「戦術的量的緩和」に踏み切る可能性があり、その動向が注目される。
- 企業収益: 原油価格の高騰が企業収益に与える影響、特にS&P 500企業の収益予想の下方修正リスクに注意が必要である。
- AI規制: 米国におけるAI技術の急速な進化と、それに対する規制整備のペースとのミスマッチが指摘されており、単一の国家レベルのAI枠組み構築に向けた動きに注目が集まる。Appleが今年のWWDC(開発者会議)でAIチャットボットの統合や新しいSiri機能を発表する予定である。